引込線 2017

ステイトメント

埼玉県所沢市は、歴代の美術家たちの実験的な自主展覧会を受け入れて来た歴史を持ちます。(*註1)2008年、西武線・所沢駅前の元鉄道車両整備工場にて「表現者の原点に還って作品活動のできる場をつくること」を主旨に「プレ展示」として始まった、この度の私たちの展覧会の前身「所沢ビエンナーレ美術展<引込線>」もその一つでしょう。この展覧会は、後に「引込線」という名で回を重ね、2017年の今回で6回を数えます。

「引込線2017」は、一般的な美術展とは異なり、統一的なテーマやディレクションがありません。その代わりに、さまざまな領域で活躍する美術家/批評家(*註2) が、手弁当で向き合い、一から表現の場をつくってゆきます。声をかけ集まったのは、自らの表現をたえず反省的に問い続け、表現者としての世界を強固に持っている作り手であり書き手です。

「引込線2017」は以下の3つのセクションによって構成されます。
1.元学校給食センター(2009年廃場。2011年以降、一部を災害用緊急物資の保管場所として使用されている)という、美術館やギャラリーといった美術制度の中の展示空間ではない、オルタナティブ・スペースを会場とする展覧会。
2. 展覧会後に発行する、「もう一つの表現の場」としての書籍。(様々な論考×展示の記録)
3.会期中に執筆陣と美術家の協働で数多行われる多様な形態のトークイベント。(*註3)

ディレクションによって位置付けられていない表現者の「この場・この現実」に対峙する緊張感が、いかなる地平に私たちを導くのか。生まれたばかりの表現と説明抜きに直に出合う、この直截な、アートの現場を是非目撃して下さい。

引込線2017実行委員長 伊藤誠

註1:所沢市における実験的な展覧会 1974年~76年に開催された「滝の城跡公園彫刻展」、1978年に航空記念公園で開催された「’78所沢野外美術展」は作家による自主的な企画運営であり、所沢市教育委員会と所沢市都市計画課の後援を受けている。またこれらの展覧会に出品した作家の数人が発起人となり、30年後に「所沢ビエンナーレ美術展<引込線>」を立ち上げることになる。

註2:表現者としての批評家の参加
「引込線2017」にはさまざまな領域の書き手が参加しているが、「同時代の美術を支える両輪は作品と批評」という観点から、総称して批評家と表記している。また執筆に関して出来るかぎりの制限を排除し、「一人の表現者として」参加を呼びかけている。

註3:ゼミナール給食センター
ゼミナール給食センターは、参加者によって企画・運営がなされる「引込線」の一セクションをなすイベントの総称。「引込線2013」より開始。芸術を巡るテーマが参加者有志により複数掲げられ、会期中ゲストを交えつつ、芸術を現在形へと更新し続けるべく、それぞれの専門領域のプレゼンテーションと対話が重ねられてゆく。開催場所は展示会場内、特設イベントルーム。今回はそれに加えて、サテライト会場/所沢生涯学習推進センターにて短期間ながら参加者による新企画を準備中。